[きりたんの城]
きりたん :
さて一方きりたんだが
そんなやり取りを横目で見つつもゲームに没頭していた
[きりたんの城]
きりたん :
「スーパーマリオは面白いですねえ…」
赤い帽子を付けて青いつなぎを着た配管工がひたすら画面を左から右へ進む単調なゲームに一見見える
[きりたんの城] きりたん : だがそこには敵のボスクッパの配下による妨害があり、それぞれ特徴的な行動でマリオの進行を阻害し、いい意味でのストレスを与えてくれる
[きりたんの城]
きりたん :
「ずいぶん長い旅路になりましたが大丈夫ですか、相棒。」
ふいに心配になって己が愛機を撫でる。
もはや何年来の付き合いになるやら
[きりたんの城]
きりたん :
「まだまだ新参者たちには負けませんよね、私達」
それは自虐なのか、あるいは自慢なのか
言っている本人にもわからない
[きりたんの城]
きりたん :
「ネットの世界も……かつてとはずいぶん様変わりしてしまいました」
哀愁漂う小さな背中が、さらに小さく見えた
[きりたんの城] きりたん : 「Y/Nなんて今は通用するんですかね……はは」
[きりたんの城]
きりたん :
様々な画像や動画が画面内に踊る
どころか画像が動き出しているものさえある
まるで本の中の魔法ですねこれは
[きりたんの城]
きりたん :
一方で、時の流れに伴ってサービス終了の文字とともに閲覧できなくなっていくサイトたち
まるで親戚や知人の悲報を新聞で見るかのような寂寥感を覚える
[きりたんの城]
きりたん :
「ここも、あそこも……あっ!」
だがまれにそこから、繭から蝶が羽化するかのように新たな媒体に乗り換えて蘇るものも存在する
朋有り、遠方より来たる、亦楽しからずや
ましてや二度と会えないと思っていたものなら
[きりたんの城]
きりたん :
「でもこちらは……」
逆に、サービスこそ終了していないのに、新しいサイトに人を取られて、かつての思い出とわずかな人たちだけが残る廃墟のようなサイトも存在する
[きりたんの城]
きりたん :
「あはは……このころは毎日面白い動画が投稿されていましたねえ」
もはや通常の食事をとることができなくなった老人が、流動食を飲むように。すでに見知ったものを思い出とともに何度も何度も咀嚼する
[きりたんの城]
きりたん :
「ここいつも同じ題材と話題リフレインしてますよね、そこが好きなんですけど」
次は掲示板、もしかしたら最も時代の変化に耐性のある場所かもしれない
同じスレッドの画像をクリックすれば同じ話題が、たまに違った話題を内包しつつも、それ自体もまたテンプレとして引き継がれていく
[きりたんの城]
きりたん :
「うーん、堪能しました」
目がシパシパしてきた、やっぱりこの年で長時間画面を見つめているのはつらいですね
んっと伸びをして視界がゆがみ、そのまま炬燵の天板に突っ伏す
[きりたんの城]
きりたん :
「……zzz」
しかしてしばらくするとその口からは寝息が
若者たちの元気にはついていけなかったようだ
余り健康に良いものではないが、それでもこたつの魔力には逆らえない
[きりたんの城]
きりたん :
「若さを吸い取れるかと思いましたが…逆に吸われてしまいましたね……むにゃむにゃ」
きりたんはそんな寝言を言いながら、深い眠りにつくのであった